5/14~5/20の日記
2020.05.24
コウヅルユウタです。
この日記は庚申窯のオンラインショップ
「くろつる屋」のブログを
1週間分まとめたものです。
5/14 活用されていないいくつかのスペースと活用されるゴミの話
5/15 赤い虫と寿司桶の話
5/16 翼果と高反発スポンジの話
5/17 ムーディーな照明と轆轤の話
5/18 芥子菜とヘルメットの話
5/19 感情のエネルギーともったいない倉庫の話
5/20 感情代行業者と夕凪の話
例によって大まかにしか書いたことを覚えていませんが、この日記は作業中に思いついたことや、自分の中の象形を言葉にするとしたら こんなところかしら、という感じで書いております。その都度の思いつきなので矛盾があってもそれは正しいのです。矛盾を抱えられるというのは人間ならではなのです。
くろつる屋の方もよければ覗いてやってください。
活用されていない幾つかのスペースと活用されるゴミの話
5月14日 くもりのち晴れ
赤い虫と寿司桶の話
5月15日 くもりのち雨
5月16日 くもり
ムーディーな照明と轆轤の話
5月17日 晴れ
5月18日 雨のちくもり
でも会話とかはつまんなくなりそうな気がします。
ユーモアは不平不満から生まれると言いますから。
感情のエネルギーともったいない倉庫の話
5月19日 晴れ ときどき くもり
そしてすぐさま目に飛び込んでくるこの流れつき!
釉薬の!アイヤー!!やられちまったぜ!
焼く前の心配は実を結んだようで、
やはり電気窯のコイルが老朽化しているせいで、
温度が低いまま時間だけ長くかかってしまった
そんな感じの焼けすぎな状態です。
棚板まで流れ着いちゃっている上に、
この釉薬には普段でない感じのピンホールが
えらい出てるけど、その割に
色が溶けきった発色ではないので
これは今回の焼け方が
この釉薬と合わなかったんでしょうね。
コイル交換をケチらずにおけばこんなことには、、!
でももう窯自体がイカれつつあるから
どうせ変えるなら新しい窯を!
と思うけど しかし
そんなもん買える台所事情であろうはずがない!
庚申窯は存続できているのがおかしいくらいの台所なのですから!
というわけで、
万全の電気窯はしばらく手に入らないので
これは釉薬を調整するか
灯油窯の方で焼くかですね。
割とどちらも行けそうな算段はついているので
あとはチャレンジするのみ!
失敗?そんなもんは陶芸にはつきものさ!
あっはっはー!
そうなのです。
焼き物作りは常にトライアンドエラー。
特に庚申窯のいい感じの釉薬は
台所事情と同じく
微妙なバランスで成り立っているので
失敗も多いのです。
今回みたいに完全に失敗することもあれば
なんか色がパッとしない
というような地味な失敗のパターンもあります。
私は繰り返しの失敗を経てきたおかげで
このような時はむしろ
「上等じゃねーかい!んにゃろめい!
ダメになった倍の数作ったるわい!」
と やる気 元気 いわきモードに突入します。
怒りというのは大変効率の良いエネルギーなのです。
あと締め切り。
人間は感情の生き物なので
理性でどうこうする時よりも
感情の乗っかった時のパフォーマンスは
「そんなにやれる子だっけ!?」
と 自分でもびっくりするくらいの馬力がありますから
この感情の見極めが
何をやるにも重要であると思います。
馬力が強い分 暴れ馬のようなものなので
きちんと目的地に辿り着けるかはわかりませんが、
それを含めてうまく付き合うことが肝要ですね。
理性のエネルギー効率だと
やっぱり人力って感じですもの。
もちろん理性によって制御された状態で
80点くらいの仕事をやり続けるのが
プロフェッショナルだと思うので、
こちらの方は訓練が必要ですね。
ま でも今回は水色の小皿がダメになっただけで
↓こっちの色の方は、今の電気窯の状態でも
いい具合に焼けています。
たぶん緑青(ろくしょう)は高温度帯でゆっくり焼かれると
いい色になると思います。
形を変更したこの丼も↓
普通の形だったら緑が流れすぎなのですが、
足を高くして、腰を絞った形のおかげで
むしろこのくらいの方が
押し出しが強くて良い感じだと思います。
あと小皿では全滅だった水色の釉薬も
丼の方はまあまあな出来で、
流れつかない形にしたおかげで
釉薬の垂れたところが有機的な形になって
器のアクセントになっています。
おかげでめちゃくちゃ釉薬の玉できたけど。
いっぱいできるから やはりこの玉の
使い道を考えた方がいいかもしれませんな。
今回目立った被害は水色の小皿だけだったので、
そんなにひどい失敗ではなかったようです。
まあ小皿の枚数分の制作時間が
無に帰したわけですけども。
売り物になれなかった傷だらけの天使たちは
工房すぐ横の
失敗作たちの置き場にしばらくおかれます。
これは私の中で作った気持ちが
成仏するまでのあいだ置いておいて、
もう十分だと感じたら庭の奥の
物原(ものはら:失敗した焼き物をわんさか捨ててるところ)
に捨てに行くという流れになります。
ところが
捨てる神あれば拾う神あり
ということで
この失敗作に何かしらで使い道を見いだした人が
持って行ってくれたりもします。
そのうちの何割かはうちの祖母ですが。
そういえば私が通っていた横浜国立大学にも
もったいない倉庫という、
いらなくなったものを捨てておくと
欲しい人は勝手に持って行っていい、
というなかなか持続可能な感じの場所があって
私はイーゼルやらトランペットやら
その倉庫からいただいたりしたのですが、
失敗作たちの溜まり場も
同じような機能になっていますね。
そんなもったいない倉庫は私が四年生の時に
なぜか廃止になってしまいました。
んーもったいない。
なぜだったのかしら。
いいアイデアだと思うのに。
もし街にそんな場所があったら
出不精の私でも定期的に通ってしまいますね。
そういうのって行政では難しそうだから
やはり個人でやるしかないのかしら。
庚申窯は既に親戚たちの
いらないもののターミナルにはなっていますけど。
感情代行業者と夕凪の話
5月20日 晴れ
本日のBGM BLAZE
福岡県の緊急事態宣言が解除されたのを受けて、くろつる屋の管理人 めい が子供と一緒に庚申窯にやってきました。私の妹めいの子だから姪っ子ですね。わかりやすいような ややこしいような。
その姪っ子Y氏↑が来てるからってことで、近場に住んでいる親戚たちも庚申窯にやって来て、ワイ氏を肴に賑わっておりました。
ワイ氏にはぜひとも親戚一同から存分に甘やかされて、顔つきからして生意気そうな こまっしゃくれたガキに成長していただきたいと思っているのですが、
んなこと言いつつも子供はやはりいいもんで、いいとは言うけどそんなまた曖昧な、その理由はなんでい はっきりしろい!
なんて突き詰めるのは野暮ってもんかもしれませんが、野暮にならなきゃここから先は ワイ氏のブロマイドを並べて、いいのぉ〜 ういやつじゃ ういうい、なんて言うより他なくなってしまうので ここはひとつ野暮でいかせていただきます。
子供を見て気持ちが高揚したり、一緒にいて楽しかったりする理由というのは、生物学的にとか文化人類学的にとかで色々とありそうですが、こういう面もあるんじゃないかな と今日思ったのは、子供は感情の代行業者なのではないか、ということです。
ていうのも不肖高鶴裕太29歳、好奇心が押さえきれなくて駆け出すなんてことはここしばらくありませんし、犬猫を見かけて雄叫びを上げることもありません。
オムツが気持ち悪いからズボンごと脱ごうとしたら2枚いっぺんにやるもんだから足首で抜けなくなって それを無理くり外そうと もがいているうちに足首が変な形でロックされて 自分ではどうしようもなくなってしまい助けを求めて泣き叫ぶというようなこともなくなって久しいのですが、
子供たちは出会う物事にいちいち感情が大きくうねっていて、楽しいも嫌だもメーターいっぱい振り切ってる感じ。
一方で私のような人間は 夕凪の瀬戸内海のような心持ちで毎日を過ごしているため、彼らのあの剥き出しの感情に惹かれる部分があって、一緒にいることでその感情や 物事に対する新鮮さを共有しているのではないかと思うのです。
そんな子供の激しい感情とは反対に、実際のところ子供たちに起きている事件は、私にとってそのほとんどが簡単に解決できるものだから、安心して感情を共有していられるというのが、これまた心地いいのではないでしょうか。
子供たちがつまづいてしまうほとんどのことは、我々はスマートにこなせちゃうし、子供たちが初めて見るものは見飽きてるし、子供が理解しようとする物事の仕組みも当たり前の知識として持っている。
ということは できることや知ってることが増えていくほどに、感情の波が起こりにくくなってしまうということでしょうか。
んーそれはつまり何かを手に入れたら何かを失うっちゅーやつですかいな。そういうのはゴリゴリな成功者になって自虐的に嘯いてみたいものですね。
「ふう、全ての夢が叶ってしまった。なんて退屈なんだ。。あふん。」みたいなアンニュイ多めで。
夢は叶えるまでが楽しいみたいに、子供もできるようになるまでの成長の過程が楽しくて、できることが当たり前になるとつまんなくなるということでしょうか。
そう考えると私の焼き物作りは できないことだらけなのでしばらくは楽しんで行けそうですね。いやでもさっさとできるようになりたいですけどね。いやそれができるようになったらつまんなくなって。。いややっぱり一刻も早くスキルを。。いやその焦ってる状態こそが楽しい。。いや。。。
だんご虫リレーの様子。ワイ氏は虫もイケるようです。
高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目