あがの焼窯元 庚申窯(こうしんがま)

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ウランの釉薬と不安定な長波の話

2021.02.15

本日のBGM Gustav Holst - The Planets : VI. Uranus

 

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前回の続きで、岐阜県の釉薬屋さんが廃業する時に、先代から受け継いだ「ウラン酸ソーダ」を原子力規制委員会に廃棄申請したというニュースが少し前にあったのですが、

 

ウランは放射性物質で、天然の核燃料でもあるわけですが、放射線を発していることがわかったのは19世紀末で、それ以前では古代ローマなんかで ガラスの着色剤として黄色や緑色を出すのに使用されていて、

 

その手法が再発見された19世紀初めごろから、ウランの原子力利用が始まる1940年代までの間に ウランで着色したガラスがブラックライト(紫外線)で光るってのがウケて 「ウランガラス」↓ というのがヨーロッパで大変人気となり、その当時たくさん作られたみたいです。

 

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ていうかウィキペディアの一文で

 

”昔は紫外線ランプはなかったが、夜明け前の空が青色のときには空に紫外線が満ちているので、この時にウランガラスが蛍光を放つ事によりこの特徴が知られる様になった。”

 

ってあるけど、てことは夜明け前ってめっちゃ日焼けするってことですかい?夜明け前のお出かけには注意ですね。

 

そんなウランガラスも 使用されてるウランの量は ガラスの質量に比べてごくわずかなので ほとんど問題はないのだそうですが、まあウランは材料段階で危ないので やはり今では作りにくくなっているみたいです。

 

そういえばルビーが赤く綺麗になるのは 酸化アルミニウムの結晶にクロムが1%以内の時でしたが、このウランガラスもウランは0.1〜1%くらいしか使ってないらしくて、その1%以内くらいのバランスが大事なんでしょうね。その辺は釉薬でも参考になるところですね。

 

ちなみにウランを釉薬として使用した場合 少量なら黄色、量を増やすとオレンジから赤になるそうで、なるほど黄色やオレンジの釉薬はウランで作ることができたのか。まあ今となっては作りようないんですけども。

 

焼き物博士曰く、赤やオレンジっていうのは劣化しやすい色らしくて、物質として不安定と言いますか、人間の目は光の波長の長さで色を区別してるわけですけど、長波側の色、赤やオレンジや黄色ってのは弱いのだそうで、例えばペンキとかでも赤いとこだけ早く色落ちしたりするみたいなもんで、それで釉薬もそっち系のは難しいのか。

 

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ウランを使った場合、ガラスに比べて釉薬の方が量を使うので、昔のウランを使った食器↑はなかなか無視できないくらいの放射線量があったみたいですが、もし私がそんな釉薬を受け継いでたとしたらどうしてたかしら。

 

岐阜の釉薬屋さんの持ってたウラン酸ソーダは放射線量が低いやつで、認可を受けて所有していたわけですが、この放射能っての目に見えないから、線量が低いと言われても使うのも、出来上がったものを置いとくのも不安ですし、

 

もし手元に原料があったら それで釉薬を作ろうとするかしら。それとも廃棄するか、あるいはいつか役に立つかもと保存だけしておくとか? いやーどうなんでしょうね。その立場になってみないとわかんないですかな?

 

高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目

 

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