あがの焼窯元 庚申窯(こうしんがま)

体験レポート

焼物に関する雑学を紹介します。

稲刈りの季節”藁”を焼こう

2015.09.22

9月も半ばを過ぎてすっかり涼しくなって過ごしやすい季節。

 

しかし若干標高が高くて アスファルト舗装された地面より田んぼの方が多い上野では9月の朝晩は長袖でも一枚じゃ寒いくらいで、「9月までは夏」だなんて言うもののすっかり秋な感じです。栗落ちてるし。

 

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庚申窯にある栗の木。拾ったら蒸して食べてます。

 

 

私事ですが今年の夏は何かとバタバタしていて、

「落ち着いたかな」と思ったら台風なんかがやってきて天候が崩れ、

「落ち着いたかな」と晴れ間が戻ってみるとまあすっかり涼しくなって、

また夏を満喫しないまま秋になってしまった と 去年も言っていたようなことを言っているコウヅルユウタです。

海に行きたかった。普段山なので。

 

さてそんな山の名前をとった福智町を支える主要産業はなんといっても上野焼 ! ではなく農業でございまして、今回はその農業の花形 「米」に関わるお話です。

 

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稲穂が実る秋

福智町では9月の半ばくらいから稲刈りの季節らしく、早めに刈り終わった知り合いの方の刈った稲、通称 [わら] を焼かせてもらいに行きました。藁は釉薬になるのです。

 

 

しかしまあ藁というもの、もちろん認識はしていたつもりだったんですけど今回田んぼに藁を焼きに行くと聞いて「あれ、藁ってもしかして稲のこと?」と 考えてみてなるほどそうかと24歳にして初めて Ine=Wara の等式を発見した次第で、

それまでは藁という植物が生えていてそれを乾燥させたものが藁だとでも思っていたというか、そもそも藁についてそんな考えたことなかったわいという感じで、 落ち着いてるだの老けてるなど言われますが改めて自分がゆとり世代なのを実感しました。

切り身が泳いでいる問題ですな。だって藁トークなんてしないんだもの。

 

 

その藁ですが平成の現在は藁で草履を編むなんてこともしないので自由に使っていいとのこと。

というわけでストックの藁灰がなくなりそうだったので庚申窯のメンズ総出で藁を焼かせてもらいに行きました。

 

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祖父 高鶴智山、父 享一、私 裕太と軽トラで3人で出発。私は荷台で天窓から顔を出すセントバーナードの気分で3分ほど走って現場の田んぼに到着。上野では平均的なサイズの一角でその稲の抜け殻をまとめて焼きます。

 

 

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まずはトラクターで刈られて綺麗に並んでいる藁を積み藁のように山形に集めます。

3人でやって1時間かそこらで集め終わりました。

 

 

お次は着火。集めた山を燃やしていきます。

 

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乾燥した藁だからそりゃ景気良く燃えてくれるだろうと思っていたら前日の雨と、朝露の乾かぬ午前中ということもあってなかなか燃えない。

 

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燃えやすいように棒なんかで縦に藁を積んだり空気を通りやすくしたりするものの燃えない。むしろ消える。カエルが余裕をこいて藁の山で遊ぶ。

私もよっぽど藁の山にダイブして遊んでやろうかと思いましたが スプラッター映画の影響を過度に受けている私はあの稲を刈った後の地面に残る硬そうな茎が体に刺さってしまうのではと怖かったのでやめました。

 

 

燃えないからしょうがないので一時帰宅して、午後に出向いて再度火をつけると 昼の太陽で乾燥したらしく今回は火の回りが良い良い。そして煙い煙い。

 

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あらかた燃えたら灰の山に水をかけて冷却します。しかし藁の灰というのは吸水性が抜群なようで、水をかけても表面で全部吸い込んで内部には浸透せず、冷めた藁を集めては水をかけてと繰り返しの作業でした。

 

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灰は 元は何用に使うのか知らないプラスチックの大きな容器に詰め込みます。

 

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これ焼いた灰の半分くらいでいっぱいになりそうだから灰が余ってしまいますな と思っていたら祖父がぐいと押し込んでまあたくさん入ること。結局容器の方がスペース余ったくらいで作業終了。

 

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これで当分は藁には困りませんな。3~4年分はあるそうな。

この藁の灰から[天然藁灰]の釉薬を作ると真っ黒なドロドロの液体ができまして、それを焼くとあら不思議 白い焼き物になって生まれ変わるのです。

 

こんな色になります。よく使います。

これが天然藁灰の色

 

お米も炊くことで白くなるから藁も焼いて白になるとはオツなことでござんすな。

「この 白いごはん茶碗も 土と、稲と、火の恵みで作られました」

なんていうキャッチフレーズが思い浮かんで、でも案外ウケるんじゃないのなんて思ったりして、海に行けなかった分は畑で日焼けしたのでぐっすり寝ました。おわり。

 

 

 

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