磁器って?陶器って?
2014.03.20
こんにちは 庚申窯3代目(仮)のコウヅルユウタです。
今回はやきものの中で 陶器と磁器の違いについてのお話です。
焼き物の歴史は古くて さかのぼれば縄文時代とかになります。縄文土器がやきものの歴史の始まりとも言えますね。
そもそも縄文って言うのは土器に付けられた縄目の文様のことです。今のところ世界最古のやきものが縄文土器なんだとか。
歴史の古いものは様々な呼び方がありまして焼き物も例に漏れず陶器、磁器の他にセトモノとか言われたりカラツモノとか言われたり。
セトモノの語源は愛知県の瀬戸地方が古くから陶磁器の生産が盛んであり、量産化にもはやく成功して瀬戸産の陶磁器が全国に行き渡っていたため、いつしか瀬戸以外の陶磁器でもセトモノというように。
これと同じく西日本では産地として唐津が有名だったので唐津物。
英語圏で言うchinaも中国(China)で大量に作られ、磁器製造の技術もズバ抜けていたため、そこから伝わって来たという事でchina=磁器
ちなみにjapanは漆器。
カンボジアから来たからかぼちゃ。
では磁器と陶器の違いについて
どちらも粘土を成形して作られるという事はご想像がつくと思うので
まず粘土とは何かという事からはじめると分野によっていろいろあるのですが鉱物の粒の大きさが2〜5マイクロメートル以下のものが粘土と言われるんですね。これが大きくなると泥とか砂とかになります。イルカとクジラの違いみたいなものです。
かつて岩であったものが永い時間をかけて砕けて、また風化して粒を小さくしていき粘土になります。これを水で練って成形し、焼き上げる事で粘土の粒子を結合させたものが陶器ですね。上野焼きの場合ですとだいたい素焼きで800℃前後、釉薬をかけた本焼きで1200〜1230℃です。
一方磁器は自然に存在する粘土から作られるのではなく、珪石と長石 というガラス質の素となる成分を多く含んだ陶石を細かく砕いて鉄分などの色のついた部分を取り除き白い粘土 にします(磁器は白いものほど価値があるとされています)。
ガラス質が多く、本焼きの焼成温度も1300℃以上で焼き上げるので顕微鏡などで断面をのぞいてみると隙間なく焼き締められています。
これにより水分を通さず、強度も陶器より固く、ガラス質が豊富なため透光性があります。はじくと金属音に近い音がするので風鈴にもできます。これは磁器が高密度なため音が分散しにくいためです。
陶器と比べると軽くて丈夫で、透光性があるので白が奇麗 と、羅列すると磁器が完全勝利していますね。
そう磁器はやきものの歴史の中で人類が到達した最高技術のものといえます。かつては王族や貴族だけが使用したり、宝石と同等の価値があったりしました。
しかし機能的に陶器は磁器と比べて劣るかもしれませんが情緒的な面では必ずしもそうではありません。日本では千利休が提唱した侘び茶の美学で作為的なうつくしさより土風味の素朴なうつわに美を見出しました。
日本人的な感性が均整美より素朴さを求めるのかもしれません。
陶器との使い分けとして、磁器は熱伝導率が高くお湯をいれればうつわもすぐ熱くなります(なのでヨーロッパの食器など取っ手付きのものが多いんです)が、一方 土ものと言われる陶器は磁器より隙間が多いため、熱伝導が低く保温効果が高いのです。
またその隙間から空気が微量循環するので長時間水を汲んでいると水分が漏れ出る一方、花瓶など花の持ちが良いとも言われます。
逆に水分が漏れては困るものは磁器が使われます。たとえばお風呂などがそうですね。
陶器の魅力について
白磁は白が重要であり、不純物が混じると汚れが入ったように見え価値が落ちますが、陶器ですとそれが逆に景色(陶器の釉薬の流れや変化などのうつわの見所)になり逆に価値が上がる事もあります。
抹茶椀などではうつわの歪みや傷なども鑑賞、愛着の対象になり ありのままでも大丈夫というか
この陶器のなんだか少しのんびりして懐の深い所が僕は好きですね。
磁器も陶器もそれぞれに良さがあるのでシーンによって使い分けることで よりやきものたちが活躍してくれます。
やきものを選ぶ時の参考になればさいわいです。