8/6~8/12
2020.08.19
コウヅルユウタです。
この日記は庚申窯のオンラインショップ
「くろつる屋」のブログを
1週間分まとめたものです。
8/6 棚板の融点とポケモンの話
8/8 宝石と釉薬の共通点の話
8/10 クーラーと自然原理主義者の話
8/11 チラシ作りとダウンタウン81の話
8/12 緑青と小鉢の話
くろつる屋の方もよければ覗いてやってください。
こっち↓の方が確実に読みやすいですよ。
棚板の融点とポケモンの話
8月6日 晴れ
本日のBGM Parachute - Cocktail Night
そういえば梅雨が明けたので やらねばならぬことがございまして、それが棚板の掃除なんですけど、棚板というのはこちら↓になります。
棚板とは何かと言うと、窯の中で焼き物を並べるための板でして、棚足という柱と合わせて積み上げていって、窯の中に焼き物をなるべくたくさん詰め込むための道具でして、こんな感じに使います↓
この棚板というものが開発される以前は、焼き物は窯の中で重ね合わせた状態で焼くとかしてたので、この棚板のおかげで焼き物作りはものすごく効率が良くなりました。
まあその重ね合わせた状態で焼いた際に 器同士がくっつかないようにする技術や、それによって様式化した技法もあるので、それはそれでオールドスクールな焼き物好きにはたまらないものがあります。でもやっぱり現代では棚板を使うやり方が一般的ですね。
棚板は重たい石みたいなので出来ているような印象ですが、今多く使われているのはカーボランダムという素材だそうで、カーボランダムは何かっていうと炭化ケイ素のことだそうで、炭化ケイ素は何かっていうと詳しくはウィキペディアをご覧ください。
いやーこれで見ると融点が2,730度というのはエグいですね。マグマが1,200度とかで 鉄が熔けるのが1,500度とかですからね。温度が高くなるにつれて光の放射量というのは大きくなるんですけど、
昔の出雲の たたら製鉄とかで、鉄を熔かす際に火の調子を見つめなければならなかった作業員たちは 1,500度という温度が出す光のせいで 大体みんな目を患ったそうです。たたら場は もののけ姫に出てくるやつですね。
多分そのたたら場の作業員たちが過酷な製鉄作業で片目や片足を失って、それが一本ダタラという妖怪のモデルにもなったと思うんですけど、2,700度とかになるともう眩しくて見てられないでしょうね。そもそもそんな温度を作り出すのもかなり大変なんですけど。
ちなみに今確認されている一番融点の高い物質は最近ロシアで開発された、ハフニウムと炭素と窒素をあれこれして合成した物質だそうで、4,000度以上の高温にも耐えることができるそうです。
ここでポケモンについて考えますと、ほのおタイプのポケモンの中で、体温が1万度というやつがいて、今まで出てきた温度と比較すると これがいかにとんでもない化け物なのかということが分かりますね。
この生き物自体が1万度という温度を閉じ込めることのできる皮膚を持っていたとしても、背中の方から吹き出しちゃっているわけで、もしこれが1万度だとすると、これはもう炎とかそういう次元じゃなくてプラズマが発生しまして、人間にはものすごく強烈な光 としか感知できないと思います。
あと自然界に存在する物質の沸点の上限が6,000度以下ですから、となるとこいつは存在しているだけで ポケモントレーナーはおろか、周りの草木も地面もずべて蒸発させて、地面を蒸発させ続けながら重力に引かれて地球の中心に落ちていって、地球何度目かの大量絶滅を引き起こすことになると思うので、もうこいつは全ポケモンが協力して退治しなければいけない奴なんじゃないかしら。
まあポケモンの設定の中には他にも 元人間で死んだ時のデスマスクを持ち歩いてるやつとか、死ぬまで脳細胞が発達し続けるI.Q5,000のやつとか、生まれてから死ぬまで寝たままで、そいつの行動は全て寝相という何かの真理っぽいやつとか、死んだ母親の頭蓋骨をかぶってるやつとか、
倫理的にアウトな 製作陣の悪ふざけが実によく出ていて、そのエグい設定をあのかわいらしいキャラクターで包み込むことで えぐみを感じさせないようにしてるわけで、ポケモンをやったことはないんですけど ポケモンのキャラクター説明はとても好きですね。説明図鑑だけで楽しめます。
昔のやつ↓
ネギはそんなに万能じゃねえ!
もちもちトラップとグラインダーお掃除の話
8月7日 くもりときどき晴れ
本日のBGM Jimmy Reed - Found Love
子猫のうちから人間にも慣れさせなあかんということで、数日前からちょいちょい引っ張り出してたんですけど、それが功を奏してだんだん慣れてきたっぽいというか、割と落ち着いていまして、そろそろ動き回りそうな感じです。
さて引き続き棚板の掃除についてなんですけど、掃除っていうのは何かっていうと、焼成中に流れついてしまった釉薬を削ることです。
流れ着いた ってのはどういうことかと言いますと、前回の続きですが釉薬というのは1,200度前後で熔ける鉱物でございまして、窯の中では出来立てのお餅みたいなドロッとしてムチッとした弾力のある液体になるんですね。
それが食器の表面で保たれたまま焼成が終わったら、普段お使いになるような、表面がガラスコーティングされた陶器が出来上がりまして、それが表面から流れ落ちてしまったら失敗作となります。
庚申窯のような、色のある釉薬を多く使うところでは そんな風に 棚板に釉薬が流れ着いてしまうことがよくありまして、焼いている時に棚板の表面に流れ着いた釉薬は、冷えるとガラス化して棚板にくっついてしまいます。
棚板にくっついた釉薬は、そのまま焼いてしまうと もちもちトラップと化して、新たに焼く器をダメにしてしまうので、棚板に流れ着いた釉薬はきれいに除去する必要があります。それが棚板の掃除で、使う道具がこちら↓です。
グラインダーと手袋とメガネと手拭いですね。釉薬というのは要するにガラスですので、棚板から除去するにはこのグラインダーでギリリリリンと削り倒す必要があって、その時にガラスのつぶてが体にバシバシ飛んできますし、ガラスの粉末もぶっひゃーと立ちこめますので、手と目と鼻と口をガードする必要があります。
あとグラインダーの音がむちゃくちゃうるさいので 耳に押し込める式のイヤホンも大事ですね。強烈な雑音は聞いてるだけで結構疲れるし、ストレスにもなると思うので、グラインダーを使う際は耳栓をお勧めします。まあ感覚器官は全部塞げってことですね。
まずは棚板の裏側をグラインダーできれいにします。
裏側をきれいにするのは裏側に不燃性のゴミがあると、焼いている時にゴミが落ちて、焼き物にくっついてしまうのを防ぐためで、あとは棚足にのせる時にカタカタしないようにするためです。
棚足ってのは黄色いところ↓ですね。3箇所で柱を作ります。3点が一番安定しますので。
次に表で、水色っぽいの↓が流れ着いた釉薬なんですけど、こんな風にくっついてる場合は グラインダーではなく金槌とノミで剥がします。
広い面積でくっついた釉薬はどっか1箇所で下に隙間を作ってやれば パキッと全部剥がれるので、ノミで剥がした方が効率が良いです。
でも釉薬がつるーんときれいにくっついていて ノミの ”かかる” ところがない場合には、グラインダーで端っこの方を1箇所削って ガラスに断面を作ってから そこにノミをぶち込みます。
それで釉薬を剥がした棚板がこれですね↓
削ったところが黒くなっていますけど、これが元々の炭化ケイ素の部分で、白いのは何かっていうと、アルミナでございまして、アルミナは何かっていうと酸化アルミニウムのことでして、酸化アルミニウムは何かっていうとやっぱり詳しくはウィキペディアをご覧くださいってことになるんですけど、
これで見ると酸化アルミニウムっつーのは ルビーとかサファイアのことらしいですね。ていうかルビーとサファイアって同じものだったのね。ていうかルビーとサファイアって言ってたらまたポケモンの方に流れていきそうですな。ということで また長くなってしまったので次に続きます。
宝石と釉薬の共通点の話
8月8日 くもりときどき晴れ
本日のBGM Flamingosis - A Groovy Thing
前回の続きで棚板に塗るアルミナについて。アルミナとは酸化アルミニウムの通称で、酸化アルミニウムの天然ものというのはルビーやサファイアであるということでしたが、ルビーとサファイアの色の違いはなんで起こるのかしら、
それはそれは酸化アルミニウムの結晶にクロムが混ざると赤くなってルビーに、鉄とチタンが混ざると青くなってサファイアとなるそうです。ちなみにクロムはベリルという鉱物に混ざるとエメラルドと呼ばれて、ベリルに鉄が入ったらアクアマリンとなるそうです。
いやーベースはほぼ一緒なのに、入り込んだ金属イオンによって色が変わるというのは面白いですね。それと同じようなことが釉薬でもバリバリ起こっていまして、例えばワラ白釉というワラ灰ベースの釉薬に、鉄を加えたら青っぽくなって、銅を加えたら緑っぽくなります。
そして緑にも赤にもなるクロムですが、焼き物でもクロムは使いまして、ルーシーリーのピンクの器なんかはクロムとスズで色を出しているんですけど、ルビーの発色がよくなるにはこのクロムが1%以内で混入している場合のみだそうで、5%を超えると灰色になって宝石としての価値はゼロになるそうです。
釉薬でも鉄とか銅とかの鉱物が色を出してくれるんですけど、だからと言って 鉱物をたくさん入れても 発色が良くなるとは限らないんですよね。バランスが大事ということですな。
そんなわけでこの棚板に、ものすごくミクロな視点で見ればルビーと同じものであるアルミナの粉末を塗っていきます。
これ↑がアルミナの袋ですね。釉薬はコバルトとか酸化銅とかの高いやつ以外は1俵単位で購入します。25キロ。
アルミナ自体はすごく安定した物質なので、陶芸で焼く程度の温度では何も変質しないサラサラした粉なんですけど、粉のままでは棚板に付着してくれないので、焼成したときに程よくアルミナを棚板にくっつけてくれるコーチング材ってのが半分くらい入っています。つなぎみたいなもんですね。
コーチングってコーティングのことなんですけど、昔の言い方のまま現代まで来たんでしょうか。創業110年ですもんね。明治のかほり。
そのアルミナを水にといて、水にとくのは均一に塗るためなんですけど、こちらも釉薬と同じですね。こういう粉もんたちは 一度水にとかないと対象にうまく吸着してくれないのです。
水に溶かしたアルミナを棚板に塗っていくわけですけど、釉薬の場合は素焼きの器が水をぐんぐん吸い込むので、粉たちがしっかりと張り付いてくれるのですが、この棚板たちは吸水性がほぼゼロなので、アルミナを塗ってもなかなか乾いてくれません。それで梅雨の時期にはできない作業だったのです。
まああんまりやりたくない作業だから梅雨を言い訳に作業を先延ばしにしていたという気持ちも少なからずありましたけど。ルーシーリーもこの作業めっちゃ嫌がってて、釉薬が流れないようなかけ方や焼き方を研究してたみたいですよ。気持ちは大いに分かりますね。でも釉薬は流れた時が綺麗になりますから 難しいところなのです。
レストランのお皿と思い出の話〜サラ〜4
8月9日 晴れ
本日のBGM 麻倉未稀 - ミスティ・トワイライト
これ↑もサラの色違いバージョンです。この色は一度本焼きした後で、福岡県久留米市にある伝統工芸品 「城島瓦」のいぶし窯でもう一度 焼いてもらって このような色になっています。
もともとは青い色で焼き上がっていたんですけど、いぶし窯が強烈な還元焼成なので 釉薬が再び変化して赤い発色なっています。この技法もかなりユニークなので、またいずれ紹介させていただければと思います。
前回は円形に切った粘土板を新聞の上において乾かすところまででしたが、この翌日には次の作業に移ります。とにかくこのお皿は乾いていく段階に合わせて作業も進行していくので、一度取りかかったら しばらくは 作業予定が自動的に決まるんですよね。
まずは皿の表側になる方を削っていきます。この粘土板をろくろに移しまして、表側として削るのは新聞紙で吸水していない方ですね。上向いてる方。
半日もおけば粘土を外した新聞紙は、下の板も含めてビシャビシャに濡れますので↓ 新聞紙が常に水分を吸い続けることができるよう新聞をこまめに変える必要があります。板もひっくり返します。
最初の削り作業はざっと削りまして こんな感じです↓
表側はどうせもう一度削るので ざっくりした削りでオーケーです。ここでの役割は、型紙で切っただけの円というのは どうしても正円ではないので、ろくろの回転を利用して均整のとれた円をしっかり削り出しておくことです。最初にしっかり円の基盤を作っておけば後の作業が楽になります。
削り終わったやつは また同じサイドを新聞で吸水します。この時の新聞も新しいのに取り替えて、この段階ではガンガン水を吸っていいので また3枚くらい新聞を折りたたんで このように敷いて↑ 次の日まで乾かします。この日の作業はこれを枚数分繰り返すだけですね。
ちなみにこの日に削った粘土の削りカスは、土練機にかけたらまた使えるようになるのでビニールに入れてとっておきます。この時 削りカスがパサついていれば霧吹きとかで水をかけておくといいと思います。
この次の日になると もう削りカスも かなりパサついていますから、これより後の削りカスは 水にとかして粘土作り〜 のところからのリサイクルになります。リユース期限は2日目までですね。
で その次の日。
今度はこれ↑をひっくり返して ろくろにセットして↓ 裏面を削ります。
裏面を削るにはある程度乾いていた方が良いので、まだ柔らかさがあるくらいでしたら新聞紙だけ新しいのに変えて 半日ほど時間を置いてもいいと思います。
ほんでもうこいつをしょっしょーんと削りまして、
削りまして、こんな感じです。もう裏面は削りませんので、ここでの削りが仕上げの削りとなりますね。写真だと分かりづらいですが、中心が少しだけ、ゆるやかに窪んでいて、一応お皿っぽくなっています。
そしてここがポイントですが、形が決まったら、ろくろを回転させて 粘土の表面を指の腹で押しつぶすように粘土を締めていきます。
すると表面が滑らかになって、あとでサンドペーパーで綺麗にする作業を省略することができますし、このお皿は曲線の滑らかさや しっとりしたカーブが大事な器なので、指で触ることで どこか変なところがないかを見つけることもできます。
指で表面を締めて、今度は今削った裏面を上に向けて、また新聞紙を下に敷きます。
前日に削ったところが下に来るので、接触面積はすごく小さくなって、そうなるとあまり直接吸水はしないのですが、それでも下になった側は湿気がこもるので、やはり1日に2〜3回は新聞紙を変えた方が、あとでお皿が歪みにくくなります。
サラ作り、また続きます!
クーラーと自然原理主義者の話
8月11日 晴れ
本日のBGM Martha Reeves & The Vandellas - Nowhere To Run
今日は一日中クーラーの効いた部屋でパソコンを使って新しいチラシ、かっくいい言い方をするとフライヤーってやつを作ってまして、暑いのは嫌ですけど クーラーの効いた部屋にずっといるのが快適かと言われれば 実はそんなことはないんじゃないかしらと思いまして、
暑い中から涼しいところに入ったという瞬間だけ 気温差による心地よさを感じますが、ずっとその中にいればあんまり涼しいことによる快感はないような気がしましたね今日やってみて。クーラーの効いた部屋から外に出る時も心地よかったですし。
ちなみに気温差アレルギーというのがあるそうで、某陶芸家の人は7度くらい気温差があるところに移動すると くしゃみが出るそうです。その人がくしゃみをしたら「あ、ここは7度くらい気温差があるのね」というあまり役に立たない指標になっております。
しかしこれは寒いのが嫌いな私のケースであって、まあ人それぞれよね、というどこにも到達しない結論が飛び出てくるわけですが、
ほんじゃあ寒いの嫌いならクーラー切ったらええやんけと仰られるかもしれませんが、このパソコンというのが軟弱なことに暑いのが不得手という体たらくでございまして、しかも大きいモニターに繋ぐための接続部品が頭おかしいんかというくらい熱を持ちまして、たぶん卵の白身なら固まり出すくらいの温度なんですけど、
そういうわけで根性論的な道理が一切通用しない この電子機器たちの寿命を縮めないためのクーラーでございまして、でも設定温度28度でも寒いなと思ってしまう私で、で この部屋のクーラー、たぶん平成初期のやつなんですけど、温度を29度とかにしたら温風が出てきてこらあかんわと、
じゃあ何か上から羽織ってやればええやんけと仰るかもしれませんが私もそう思っていまして、カーデガンなぞを上から羽織ってバランスを取ればパソコンは快適 私も快適で双方得があってええじゃないかと、
しかしですよ、上からカーデガン的なものを羽織ったら28度では多分暑いわけですよね。だとしたら今度は温度を25度とかに下げてバランスが取れるのでしょうけど、そうすると私の中の自然原理主義者が起き上がってきてですね、
わざわざ部屋を冷やして厚着をするとは何事じゃ、いろんな人のいるフロアーで働くオフィスレイディーならともかく この部屋にはお前しかおらんやんけ、お前はいつからそうやって自然に逆らうことで満足を得る人間になってしまったのじゃ、まるで真夏のホテルのスイートルームで「暖炉の火が美しいから見たい」と言って冷房を最強に効かせて、その上で暖炉に火をくべていたというハリウッドの某映画プロデューサーみたいなアホと本質的には変わらんことじゃぞ!
というような自分でもどうかと思う意固地さが出てしまって、ちょっと肌寒いのを我慢して作業してたからそりゃ快適ではないですわな。ちなみに今は夜中、ていうかもう明け方なので窓開けてこれを書いていますが こっちの方が快適ですね。
これは最近よく見かけるニホントカゲです。美しい色ですね。このあとすぐ逃しましたけど。しかしこいつほとんどヘビですな。ヘビについてもそのうち書いてみたいですね。
チラシ作りとダウンタウン81の話
8月11日 晴れときどき雨
本日のBGM PLASTICS - COPY
今日もパソコンでチラシを作ってまして、こんな感じのやつなんですけど↑、なんでこんなのを作っているのかと言いますと、町の商工会による企画で、 新しく商品開発をすることに対する国の補助金 ってのがございまして、
その成果物として実際の商品と、それ用のチラシを作って、商談会に持ってって いろんな人に見てもらって バイヤーの人たちと交渉する、というところまでセットになって補助金が下りるわけで、だから要するに商工会からせっつかれ出したので、私はチラシたちを急いで作っているわけなんですけど、
チラシ “たち” という事で、上の湯呑みは私が今回作ったやつですが 別の陶芸家の方のチラシも私が作っておりまして、ていうのも この商談会用のチラシって書類上必要なものだから、正直言って 適当に作って 審査通して 終わったら捨てる というのが一番合理的なやり方になるんですけど、
私の中のワンガリ・マータイさんが「モッタイナイ!」っつって、商工会の方で用意してくれるというのを断って、せめて自分のチラシだけは商談会後も使えるような 自分でも納得できるものにしようと自分で作っていましたら、
去年くらいから他の人のも作ってくれや という事で、もうチラシは私が作るものというような雰囲気ができておりまして、まあ全体として いいものができた方がいいよね ってことで引き受けてダーターで作っております。ダーターなんです。ここ強調しとかないとね。ダーター。まあでも他の人のを作ってると自分のやつも改良点が見えてくるのでその辺は得るものがありますね。
そうやってチラシを作っているなかで今日気づいたんですけど、文章とかデータをコピーして貼り付ける、いわゆるコピー&ペーストの コピーをするときに、私は毎回プラスチックスの「コピーコピー♪」をいちいち言いながらコピーのボタンを押していたみたいで、いったいいつから私はこれを口走っていたのか、、その後もコピーコピー♪って気づいたら言っているので これはもはや呪縛ですね。
プラスチックスと言うと「ダウンタウン81」というバスキアの映画の中にチラッと出てきますが、彼らはニューヨークでも人気だったのかしら。やっぱり当時のテクノバンドって最先端だったんですかね。
バスキアは27歳で死んだので いわゆる27クラブの一員なんですけど、ダウンタウン81も、生きてるときの81年に まだ世界的に有名になる前のバスキアが主演で撮影したのに 金がねえっつって完成しなくて、フィルムが行方不明になったままだったのを 98年に関係者かファンの人かなんかが探し出して映画にしたものだそうですが、そんな風にあとから発掘してもらえるのは幸せなことでしょうね。
まあ正直映画として見ると面白くないですが、81年のニューヨークを見るならとてもいい作品だと思います。81年のニューヨークってなんか語感としてもいいですな。ポエム感。
確かビデオがあったよねと探して 出てきたのがこちら↑↓なんですけど、ビデオパッケージを久々に手に取ってみたらテンションが上がりますな。
なんていうか物量感と言いますか、ここにちゃんと映像入ってまっせーって感じがして、ビデオだと容易にコピーもできませんし。録画されたくないビデオは爪折ったりとかありましたねそういえば。
多分これは私の幼少期がビデオの最盛期で、なくなっていくビデオに懐かしさを感じてビデオ文化全体が美化されてるんでしょうね。しかし庚申窯のビデオデッキは ほぼ全滅してるから、昔レンタルビデオ屋さんが「もう全部DVDにするわ」っつって5本 100円とかで買ったビデオたちも もう見ることはないかもしれませんな。てことはそのうちDVDも大安売りしたりするのかしら。でもDVDって買ったらあんまり見なくなってしまうんですけど、なんなんでしょうねあの現象は。
緑青と小鉢の話
8月12日 くもりときどき雨
本日のBGM George Benson - My Woman’s Good To Me
このなみなみ小鉢、まあ名前は適当なんですけど、この小鉢は父が作ったものですが、作ってる時から結構いい感じだったので紹介させていただきたいと思いまして。
これはオーダー品として作っていたものでして、昔 あがので この器を買ったという人のお子さんが、家で使っていたものが割れたりして数がなくなってきたので 同じものをもう一度作って欲しいという感じだったと思いますが、
そのオリジナルの器には銘が入っていなくて、作り手の特徴もあまり出ていなかったので どこの窯元で作られたものなのかわからず、っていう時には大体庚申窯に ご相談していただきます。
庚申窯は節操ない感じなので 注文されたら大概のものは作るんですけど、まあそのせいで私は現在進行形でご注文のものをお待たせしているわけなんですけども、ちょうどこの器に使われていた釉薬 「緑青(ろくしょう )」 の色が庚申窯の緑青と似た色合いだったので その辺も庚申窯にお話が来た理由だと思います。
この緑青という釉薬は あがの焼の窯元なら大体どこも作っていまして、それぞれの窯元で微妙に色が異なります。釉薬の調合とか、使ってる土の成分とか、焼き方や窯のクセなんかで色が変わるので、同じ釉薬なんですが「その窯元の緑青の色」 というのがあるんですよね。
私は小さい頃から 緑青ってあんまり好きじゃなかったんですけど、成人してから評価が変わって、今ではかなり好きな釉薬の一つです。
なんで好きじゃなかったのかというと、あまりにたくさん周りにあったからでしょうね。昭和の頃はこの色がすごく売れていましたから、とにかくどの窯元も作ってましたし、どの形の器でもこの色で作っていたということで、その人気が落ち着いた後の ぶり返しで 評価が下落してるような雰囲気が私の子供の頃にあったというのと、
もう一つはこれは子供向けの感性じゃないというか、子供に塩辛出してもよう食べんみたいなもんで、この色というのは多分他に いろんな味のものを食べてきて、そのどれとも違うということで面白がれる珍味的なもので、だからいろいろな評価軸を持ってないと好きになれない色なんじゃないかなあと思います。人によって好き嫌いの激しい色でもありますね。
でこの形なんですけど、私はフチがなみなみになっているお皿が結構好きでして、乾かしてるときの粘土の質感と合わさるといい感じなんですよね。
この写真はカメラが壊れてた時に取ったやつなのでかすんでいますけど、こんだけかすみを作れるカメラというのも貴重な気がします。この なみなみがたくさん並べられるとなんかいいんですよね。柔らかさを感じますし、マカロニ感あって好きです。土の色が2種類あるのはそれぞれで釉薬の色が変わるからですね。
緑青の緑色も土によって大きく変わるので、どっちがいいかを選んでもらうということで土を分けて作ったんでしょうけど、オリジナルのやつはグレーの方の土っぽい感じでしたので そちらが選ばれたみたいです。
冒頭の写真のやつは茶色い土の方ですね。この茶色い土、赤土と言うんですけど今回の小鉢は赤土の緑青の発色がとてもいい感じでした。あの発色の感じは長く使うほどに綺麗になっていくタイプのやつですね。緑青も綺麗になるタイプとそうでもないタイプがあります。
釉薬のかけ方はこんな感じでして、フチのグレーの部分が緑青で、焼いた時に下に流れて行きます。
フチがなみなみだと緑青の流れ方も変化が出てユニークなものになります。あとなみなみだと、箸を置いても動かないので その辺も評価高いですね。なみなみの作り方も何パターンかあるので、また作る時にご紹介させていただければと思います。
高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目