あがの焼窯元 庚申窯(こうしんがま)

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美しい時間と頽廃の話

2021.03.03

本日のBGM Stan Getz / Bill Evans - But Beautiful

 

何を美しいと感じるかは人それぞれ、なんて言いますが、もっと言えばその人ごとで美しさを感じやすい瞬間というのがあると思いまして、よくあるようなエピソードでは 妊娠がわかった瞬間に景色が違って見えたとか、逆のパターンだと余命宣告をされて世界が違って見えたとか、

 

要するに心の問題、野暮な言い方をすると脳内の分泌物の問題、私の場合 山道をぜいぜい言いながら走って、車庫の中にシートを広げて、まるで折檻を受けているような 背骨にいいとされるポーズをしてる時などに 景色が綺麗に見えたりします。

 

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それは多分疲労によって余計な思考が削ぎ落とされて 感覚器官に神経が集中してんじゃないかと思うんですけど、そんな状態になりたいけど疲れるのが嫌な場合は 適当なドラッグでも摂取するとそんな感じか、それよりもっと強烈な状態になれる一方、それによる社会的被害を考えると より一層疲れてしまうような気もしますが、

 

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美しい瞬間で思い出したのが「半島を出よ」という小説の クライマックスが「美しい時間」という題名で、それまで丁寧に積み上げられてきたものが一気に噛み合って崩壊していく様子が頽廃的で、まさしくカタルシスって感じで私は大変に好きな話なんですけど、

 

ていうのも今作っている焼き物のオーダーのテーマが「頽廃」でございまして、ついにレストランのお皿で頽廃という概念が登場するなんて。なんかそういうのって陶芸家の個展のテーマとかでありそうですけど、多分 外食のお店というのは 店主の内面と嗜好をより大胆に形にしていくというのが これからのスタンダードになるんでしょうね。

 

それはつまり それぞれの美しさを表現するのが認められやすい社会になってきたというところでしょうか。まあ社会の枠組みが強いほうが頽廃的な美しさってのは際立つんですけどね。

 

割れたり 欠けたりすることを肯定する器ということで、これ系のやつは焼け具合勝負ですね。いい感じにできたらいいんですけど。

 

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高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目

 

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