あがの焼窯元 庚申窯(こうしんがま)

体験レポート

焼物に関する雑学を紹介します。

レストランのお皿と思い出の話〜サラ〜1

2020.08.02

8月1日 晴れ

 

本日のBGM Scott LaFaro · Stan Levey · Frank Rosolino

 

「サラ」というお皿を今ちょっとだけ作っていまして、こういうお皿なんですけど、

sara_tokishirazuのコピー

 

このお皿も結構作るのが大変でして、どの辺が大変なのか、というのを今作ってるので写真をとって制作工程などを書いておこうと思いまして、ついでに このお皿ができた経緯も紹介させていただければ ということなのです。

 

 

まず経緯の方からいきますと、福岡県の筑豊一帯を走る「平成筑豊鉄道」通称 へいちく というローカル路線がありまして、そのへいちくの路線を、ゆっくり走りながら おいしい食事を楽しむ というコンセプトの観光列車が 一昨年くらいから作られ始めまして、

 

レストラン列車で提供される器に 地元の伝統工芸品のあがの焼を、ってんで庚申窯を選んでいただいて、お皿をオーダーしてもらったのがきっかけになります。

 

画像2

 

こちら↑がその時もらった資料で、当時まだ列車が出来上がってなくて、完成まで絶対に公開するなと釘を刺されていたんですけど、列車運行して1年以上経つし、この間乗客数が5,000人を突破したそうですので もういいよねってことで。

 

画像3

 

しかし改めて見たら列車のイラストがすごい綺麗ですな。もちろんこれはコピーなんですけど、このイラストをポストカードにして売ったら乗車記念で買って帰る人多いんじゃないかしら。

 

 

すごい均整取れてるからコンピューターで書いてると思うんですけど、なんか微妙に手書きの線もあって、手書きならではの線の揺らぎみたいなのと、どこを省略してるかっていうのが こういうリアルなイラストの魅力ですよね。

 

 

どのようなお皿にするかは、この列車で出される料理の監修をしたシェフの方と何度か打ち合わせをして、メインのお皿には 列車の赤さをイメージしたお皿が欲しいということと、

 

テーブルのスペースが限られているので直径は25cm以内、列車が揺れても動かないような安定感、フラットに近い形、料理が冷えないようにお皿をウォーマーで温めるから、温かさが持続する肉厚な作り、今後 料理の内容を変えたときのために、ひっくり返したら別のお皿として使えるリバーシブルなもの、

 

という風に詰めていってこのお皿の形になりました。

 

sara_redのコピー

 

最初からこの形に決まったというよりは、何パターンか作った中の一つで、私は好きだけど たぶん選ばれないやつ、だけどバリエーションいろいろ考えましたよ、という目配せ担当の変化球枠として作ったやつだったんですけど これが選ばれまして、

 

このお皿は完全に量産には向かないということが作り始めてから分かったんですけど、その時は「はいはーい」なんて気軽に受けてしまいまして、他に用意したお皿はもっと作りやすいやつだったので、それ用の値段のままで受けたんですけど、値上げさせてもらったらよかったですね。

 

画像5

 

て言うのも、このお皿は作るのも大変なんですけど、焼き上げでめちゃくちゃ割れまして、ここ↑に写ってるのは割れた中の一部なんですけど、作っては割れるので しょうがないから また作る、という 賽の河原の石積みみたいな反復作業をやることになり、それは精神鍛錬に大変効果があったのではないかと思います。

 

 

でもこれを書いてて「そういえばそうだったな」と思い出しているくらいなので、喉元過ぎれば熱さを忘れる というやつかも知れないですね。まあそれもいいんじゃないかしら。

 

 

このお皿の取り掛かりについては大体こんな感じなので、次は具体的な作り方について紹介させていただければと思います。

 

 

 

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