あがの焼窯元 庚申窯(こうしんがま)

体験レポート

焼物に関する雑学を紹介します。

レストランのお皿と思い出の話〜オーバル〜

2020.06.22

6月21日 くもりのち晴れ

 

本日のBGM The Spinners

 

昨日 遠方のレストランの方からお問い合わせをいただきまして、サイズ感や質感、実際にお店で使用した際の見え方などを知りたいということと、できるだけいろいろなタイプのお皿を見てみたいとのことでしたので、

 

今日は手元に残っているお皿を引っ張り出して、サンプルとして発送するものを選んでいましたら、けっこういろいろ作っておるなあと思いまして、

 

たぶん中にはもう作らないものもあると思うので、せっかくなのでそれぞれのお皿の写真を撮って、お皿の制作にまつわることなども忘れないうちに書いておこうと思いまして。

 

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いちおう庚申窯のホームページにも写真と説明はあるんですけど、あちらではちょっと固い感じなので、こちらでは砕けた感じで。

 

 

今回お問い合わせいただいたのは、あまり有機的な形でない、つまりでこぼこした形とか、手の跡をぶりぶりに残してるとかではない感じの、

 

円とか楕円とか四角とか三角とかのシンプルな形のもの ということでしたので、そんな感じので在庫にあるやつを今回はピックアップしました。

 

ちなみに三角形は陶芸を始めたての頃に作ったけれどあまりよくなくてですね、今はもうないんですけど、機会があれば三角でかっこいいのを作ってみたいです。難しいのは、正三角形って意外と尖ってるってところなんですよね。どうしても奇をてらった感じになってしまいがちです。

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これはわりと最近作ったもので、オーダーメイドのものだったんですけど楕円形のボウルで、「オーバル」という名前の器ですね。まあぶっちゃけルーシーリーのパクリなんですけど、でもやっぱりボウルってちょっと楕円に歪ませたほうが格好がつきやすいんですよね。

 

 

お皿のフチに高低差ができるので、それがうつわの動きになりますし、食べる時も、体とお皿の中心までの距離が近くなるから、食べることに対する集中性は普通のボウルよりも高くなるんじゃないでしょうか。

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これ↑はあまり楕円の強くない方でして、これを作った時に楕円のきついバージョンと、この緩やかなバージョンどっちも作ったんですけど、シェフの方によって そのどちらがいいかは分かれるみたいです。楕円のきつい方↓が見た目のインパクトは強いですね。ただ重なりがめちゃくちゃ悪くなるというデメリットがありますが。

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楕円に歪ませることには「けっこう形をごまかせる」っていう利点がありまして、実は正円でかっこよく作るのには かなり技術がいるんですけど、歪めてしまえばその歪みの方に意識が向くので、ちょっとミスってたりするところも気付きにくくなります。だからとりあえず歪ませておけば「あえて感」が出ていいんじゃないでしょうか。

 

 

このお皿は内側が白化粧土のハケ塗りで、外側は赤土に酸化銅を混ぜた化粧土をすごく薄めてハケ塗りしていまして、塗りの厚いとこ薄いとこで濃淡が出て、器の表情を多層的に見せてるんですけど、料理に意識を集中してもらうために、内側の白がパキッと目立つよう 外側は引き立て役で この落ち着いた色になっています。

 

あと高さのある器なので、内側と外側で色を分けて、コントラストをはっきりさせておいた方が、横から見た時の輪郭がきれいに見えますね。

 

この楕円形のボウルを作る際の注意点は、あとから削って薄くすることはできないので、ろくろで形を作るときには「なるべく薄作りにしておくべし」ということですね。

 

この形を活かすにはフチが薄い方が見た目の切れ味が増すので、フチを薄くした方が良くて、それならボディの方も軽い作りにした方が、無意識下での印象が良くなると思います。まあ私がこのとき作った楕円のきつい方はけっこう重いので反省しています。

 

あるいは高さが出ても構わなければ、高台をつけてあげたほうが作りやすくて、格好が引き締まりやすくなると思います。

 

 

えーボウル1点だけでいつもの文量になってしまったので、今回はオーバルボウルだけ紹介させていただきました。また他のお皿も記録がてら紹介させていただきたいですね。

 

前に作ったオーバルのサンプルの写真があって、せっかくなのでそれらも披露させていただきます。色のパターンをいろいろ試したものですね。

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この釉薬は見た目はかっこいいんですけど、この色味を出すためには厚がけする必要があって、焼き上がったら器に厚みが増して、重たくなるので悩ましいところですね。

 

 

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これは白化粧土のみ

 

 

 

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これ↑とかけっこういい感じだと思うので、色のパターンだけでも応用したいですね。確かコバルトを混ぜた化粧土だったと思いますけど。

 

 

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コバルトの化粧土のハケ塗り

 

 

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こっち↑は化粧土にグレーの顔料を混ぜたものですけど、焼き上がりはちょっと緑がかって見えますね。

 

 

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これは練り込みで作って、木の灰を全体に振りかけて焼いたやつ。本当はもっと土の色に差が出るはずだったんですけど。

 

 

おれ

高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目

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