あがの焼窯元 庚申窯(こうしんがま)

体験レポート

焼物に関する雑学を紹介します。

象嵌でお皿に絵を描こう

2014.09.15

夏をこれでもかと楽しみにしていて野外用のスピーカーまで買ったのに上野の8月は雨が続き、夏のこないまま 「もう秋ね」 なんて言われてて憤慨千万な庚申窯3代目(仮)コウヅルユウタです。まあ秋も好きなんですけどね。

 

秋桜とも書かれるコスモス。庚申窯のその他の秋の花はこちら

 

 

さて今回は“象嵌”をやってみようと思います

象嵌(ぞうがん)というのは地の素材を彫ってそこに別の素材をはめ込んで模様や絵を描く技法のことで

もともとは彫金で使われていたものでしたが木や陶器などでも使うようになりました。陶器は可塑性がバツグンなので他の素材の技法を転用しやすかったりしますね。

 

陶器で象嵌と言った場合、粘土をお皿やら湯のみやら形作った後の「生乾き」の状態のときに表面を彫り、そこに違う色の粘土を練り込んで色の違いで模様を出します。

 

 

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ではろくろで作って、高台を削ったばかりのお皿を用意します。

高台を削る時点である程度乾いているのでこれ以上乾くと 象嵌で入れこむ ヘドロ状の(ヘドロなんていうと怒られそうですが)ドロドロした化粧土(※)との乾燥具合・収縮率の違いから粘土にヒビが入ることがあるからです。

例えば粘土が乾く際水分が抜けるのでその分縮んでしまうのですが、そこに一カ所だけ化粧土のような液体をかけるとそこがまた膨らんでしまい周囲の乾いた粘土を押し広げてしまうからです。

 

 

※化粧土とは製造用ではなく、この写真の赤土のような有色の粘土で作ったものの表面にかける白色で液状の粘土のことを言います。また現在では顔料を混ぜ込んでいる色つきのものもあります。庚申窯には白色のものしかなかったので今回は単色ですが複数の色を使い分けることで筆の絵付けではできない写実のような細かな書き込みをすることもできちゃいます。象嵌が得意な人って職人って感じ。

 

 

 

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まずは下絵として鉛筆で模様を描きます。今回は僕の名前にも入ってる“鶴”のもようを。

庚申窯には作ってある化粧土が白しかなかったのでデフォルメした簡単な線のものを。

 

 

 

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さてこの彫った溝の中に筆で化粧土を塗り込んでいきます。あとで思いましたがイッチンでもいいかもしれません。他の人のものを見ると刷毛で周辺の粘土ごとたっぷりとべた塗りしていました。たしかにそれもいいかも。

 

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作業終わってこちら。「雑だな」と思われるかもしれませんがどうせ後から削るからこれでよいのです。

 

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半日ほど置いて生乾きになった化粧土のはみ出た部分を削っていきます。大きなかんなで一気に削ってもOKですがその際は削らない部分との段差ができないように気をつけましょう。

 

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削り終わってこちら。「雑だな』と思われるかもしれませんがまた削るのでこれでよいのです。

 

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あとは乾いてから削ればいいや。と ここで1週間ほど窯から離れていると帰ってきたときには父・高鶴享一によって既に素焼きに!

粘土が乾燥している状態の方が素焼きに比べて削りやすかったのですが、しょうがないのでこのはみ出た化粧土の部分を紙ヤスリで削ります。

ちなみに右の皿は“掻き落とし”という技法の、象嵌とは反対のやり方で模様を描く技法です。僕的には慣れているからかこっちの方が好きです。

 

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削ってこんな感じ。素焼き前ならもうちょっときれいに輪郭がでたんじゃないかなー と いい訳をひとつ。

 

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象嵌の場合彫った絵が見えるように透明釉をかけたり、何もかけずに高温で焼き締めたりしますが今回は単色の象嵌ですし、土色も砂とか入れてないきれいなものなので色付きの釉薬を半透明になるようにかけました。

焼き上がりがこちら。銅がベースの釉薬を使いましたがかなり薄がけにしたので地の粘土の茶色っぽい色になりました。

 

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試しに盛りつけてみました。

絵が入っているとひもの一枚でもまさに“絵”になりますな。「お皿がいいと料理もてきとーでいいよね」なんてって自分の実力不足を反省しながらの このもらった干物の魚すごいうまかった。

 

おわり

 

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