あがの焼窯元 庚申窯(こうしんがま)

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蚊遣り器を作ろう

2014.04.23

だんだんと暖かい季節になってきました。どうも庚申窯3代目(仮)コウヅルユウタです。

 

陶芸の産地というのは主に良質な土がとれて粘土作りには欠かせない“水”が豊富な所で発展します。
粘土の場合はある程度の量を運んでしまえばあとは放っておいても大丈夫なので陶芸家が窯を築くのはおおむね水源の近くになります。

また かつての作陶においてどこの粘土をつかっているかは今で言う企業秘密のようなものであり粘土の産出地を隠すためであった場合もあります。

庚申窯裏の池

庚申窯裏の池

 

 

上野焼も例に漏れず福智山からの豊かな水源をもっており庚申窯の近くにも川が流れ池などもあります。

ちなみにこの川に古くからかかっている石橋の名前を庚申橋といいましてこの橋から名前をとって庚申窯となりました。
名付け親は宮若市で作陶されている薪窯(しんよう)の高鶴淳一さん(こうづるじゅんいち:名前がかぶっている庚申窯2代目高鶴享一のいとこにあたります)

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粘土の精製から成形まで大量に水をつかうので庚申窯には溝やら甕やら水どころが豊富です。そして自然もまた豊富なので暖かくなってくるとモスキートたちがそこからここから現れてくるのは毎年恒例。

 

虫との距離を近めに過ごすわれわれには虫対策が必須です。

かといってしかしスプレーや虫こない的な商品では和風家屋ばりばりの庚申窯には少し不似合いである気がするので(まあ使ってるんですけど)蚊取り線香がいいのではないかしらん。夏っぽいし。

なれば蚊遣り器を作ろうではないかと思い立ち実際に作ることに。

 

蚊やり器というのは「あの豚のやつ」を筆頭に陶磁器などで作られた蚊取り線香の火や灰が飛び散るのを防ぐ蚊取り線香の入れ物です。

幼少より「なぜ豚なのか」と疑問に思い続けgoogle先生に聞いても釈然としないので今年の干支ということで馬で作ってみます。

 

 

さて鉄分を程よく含んだ粘土と新聞紙と作りやすいように くるくる回る台を用意します。もし自分で作りたいと思われた方は庚申窯などがおすすめですよ。

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まずは基盤の台を蚊取り線香の大きさに合うように作ります。今回は「りんねしゃ」という会社のミニサイズの蚊取り線香を想定して小さめに。

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中を空洞にしてしまうのでこういった場合は手びねりが作りやすいだろうと思い“粘土のひも”を積み重ねていきます。
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積み重ねたひもの表面を指でつぶして接着します。

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馬の口の部分は前に突き出している形にするので折れないよう根元を厚くして先端を薄くします。後々、ある程度乾いてから厚い部分は削ります。

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大まかに輪郭ができて口の下と内部に新聞紙をつめて折れないようにします。新聞紙が吸水するので外と中の乾燥具合を均一にする効果もあります。

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半乾燥状態になったら彫刻刀や削り棒を使って細かい部分を作っていきます。

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白目の部分には化粧土を塗ります。ちなみに今回の蚊遣り器のテーマは「日常に気持ち悪いものを取り入れよう」です。たまにはこういった無分別なものがあってもいいんじゃないでしょうか。夏だし。

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ちなみに奥の馬の絵は呉須(ごす)という焼き物の絵の具みたいなもので書いてみたピカソの習作

 

 

さて無事焼き上がりました。

馬の皮膚感や火を使うので鉄薬にしようかと迷いましたが形状と反して爽やかな色にしたいと思い水色に。
IMGP2136ちなみにこの蚊取り線香 除虫菊という天然成分のみで作られていて正確には蚊を落とすものではなく蚊をよせつけないものだそうです。子供にも安心だとか。

 

 

実際に火をつけると狙い通り鼻と口から煙が立ちます。表情がまたいいですねどうも。

この夏はこれで決まり。

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